2,000ドル、2,000トン
2012年5月14日
4月の貴金属相場は米国の追加金融緩和観測が後退したことに加え、中国の景気減速懸念などによりさえない展開が続きました。欧州の先行きも依然として不透明です。スペインが債務問題の焦点となりつつあるほか、フランス大統領選挙の行方やオランダの内閣総辞職をめぐって、ユーロ圏中核国の政情不安もあらわになりました。また、宝飾業者によるストは終わったものの、祭事シーズンを迎えるインドの金需要は期待されるほど伸びていない様子。唯一ポジティブな材料は、国際通貨基金(IMF)の統計でメキシコ・ロシア・トルコなどの金準備積み増しが明らかになったことでしょうか。一部の中銀は引き続き粛々と金を購入しているようです。
さて、トムソンロイターGFMSによる金市場レポート「Gold Survey 2012」が発表されましたので、その発表資料から昨年の金市場の概要と今年の見通しをまとめてみたいと思います。( )内の数字は前年比です。
2011年の金市場
供給
- 鉱山生産:2,818トン(2.8%増)
鉱山業界は過去10年に渡る金価格上昇の恩恵を受けている。新規採掘プロジェクトは軌道に乗り始めており、既存鉱山もより長く生産力を維持できるだろう。 - 中古金スクラップ:1,661トン(3.4%減)
先高期待により売り控え。 - 正味生産者ヘッジ:6トン
11年ぶりに売り越しに転じた。
需要
- 加工用:2,759トン(0.9%減)
加工用需要のうち、宝飾品需要は1,973トン(2.2%減)。価格上昇や景気減速により減少したが、中国では496トン(14.6%増)と過去最高を記録。 - 公的部門購入:455トン(491.1%増)
ドル資産の分散を図りたい各国中銀の買いが膨らんだ。CBGA(Central Bank Gold Agreement:中央銀行の金売却協定)に基づく売却量は限定的。 - 投資:1,605トン(10.4%減)
前年から減少したが、引き続き歴史的な高水準にあり、金需要全体に占める投資需要の割合は36%に達した。低金利や債務危機、インフレ懸念などが強材料となった。
また、投資の大部分は現物需要(バー、コイン、メダルなど)であった。現物需要は1,543トン(30%増)で過去最高。中国やインド、欧州が牽引。特に欧州では2008年から現物需要が急増しており、昨年は世界的な金融危機発生以来、過去最高を記録した。
2012年の見通し
供給
- 鉱山生産は3%増。金価格の上昇が新規の採掘プロジェクトや鉱山の拡大を促進。
- 価格上昇や換金売りの必要性からスクラップは増加。
- 生産者ヘッジも継続するが、数量は控えめ。
需要
- 宝飾品は価格上昇や世界経済の成長鈍化により減少。ただ、中国は増加が期待される。その他の加工需要は横ばい。
- 公的部門購入は続くものの、前年比ではやや減少か。
- 投資需要は2,000トンに迫る見込み。
価格
- 需給バランス*は供給過剰だが、投資需要が引き続き価格を押し上げる。今年後半から来年前半には2,000ドルを突破し、最高値を更新すると予想。
- 短期的には米国の追加金融緩和期待の後退や欧州債務懸念の低下により1,550ドルまで下落する可能性もある。
- 先進国でも新興国でも経済成長のペースが鈍化。このため世界的に緩和的な金融政策が取られ、インフレ懸念が高まる。
- 年間平均価格は1,731ドル、予想レンジは1,530〜1,920ドル。
2,000トン近い投資需要に支援され、価格は2,000ドルを突破し得るということで、思いのほか強気の予想だと感じました。GFMSとしては(短期的には下落局面を予想しつつも)根強い欧州の債務問題に加え、米国の追加金融緩和が実施されるとの見方から、金市場を取り巻く環境は投資需要にとってプラスに作用するという考えのようです。
*
(需給バランス)=(供給:鉱山生産およびスクラップ)-(需要:コインを除く加工用需要)
