2010年のPGM市場、そして今後注目の分野は…
2010年12月13日
英ジョンソン・マッセイ社より、プラチナ・パラジウム市場に関する中間レポートが発表されました。
プラチナは9トンの供給過剰
- 自動車触媒需要は増加(ディーゼル車の販売回復)。工業需要はガラス・エレクトロニクス・化学などの分野が堅調。
- 宝飾需要は減少。中国では前年の在庫備蓄があることに加え、価格高騰で消費者は買い控え。
- 投資需要は価格上昇により減少。
- 見通しは自動車触媒や工業需要の増加が期待される。プラチナの生産量も増加し、2011年は需給均衡へ。今後6カ月間の予想レンジは1550−1900ドル。平均価格は1750ドル前後。
パラジウムはほぼ需給均衡、わずか1.4トンの供給過剰
- 自動車触媒需要は増加(中国でのガソリン車生産台数急増)。工業需要は電気産業が堅調。
- 宝飾需要は中国での需要低迷により減少。
- 投資需要はETFを中心に増加。
- 見通しは自動車触媒需要や工業需要の増加が期待されるが、中国の経済成長に左右される面がある。ロシアの供給懸念により需給がひっ迫するとの見方から、投機筋の動向によっては急騰の可能性も。今後6カ月間の予想レンジは550−850ドル。平均価格は710ドル。
5月に発表された同社の年次レポート(2010年6月「プラチナ・ウィーク2010」)から、プラチナはやや弱気、パラジウムはやや強気に転じた印象です。
続いて同じくJM社の中間レポートから。特集記事で「医療分野におけるプラチナの利用」という興味深い内容のものがありました。やや専門的な単語も含まれますが、お付き合いください。
「医療分野におけるプラチナの利用」
プラチナはこの10年で、カテーテルやペースメーカーなど、医療の分野で広く利用されるようになってきました。今年の同分野におけるプラチナの需要は7.9トン(歯科用を含む)と予想されています。具体的にどのような用途で使われているか見ていきましょう。
まず、プラチナには(ある化学的状態の下で)細胞分裂を抑制するという特徴があり、この発見が1960年代にプラチナを用いた抗がん剤の開発を促しました。
- 抗がん剤
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70年代に実用化され、シスプラチンやカルボプラチンといった抗がん剤が、卵巣がん・乳がん・肺がんなどの患者の生存率を飛躍的に高めました。90年代にはオキサリプラチンが実用化され、結腸直腸がんの治療に用いられているほか、ピコプラチンやサトラプラチンが臨床試験段階にあります。抗がん剤用として、毎年約780キロのプラチナが使用されています。
プラチナは化学的に安定しており、拒絶反応もほとんどありません。また、非常に小さくかつ複雑な形状にも加工できるため、次のような医療機器にプラチナやプラチナ合金製のパーツが使用されています。
- 心拍機器
- ペースメーカーや植込み型除細動器(ICDs)に、プラチナ・イリジウム合金製の電極が使用されています。
- カテーテル
- カテーテル自体は柔らかいチューブですが、プラチナ製のマーカーバンド・ガイドワイヤー・電極などのパーツとセットで、主に心臓疾患(動脈硬化)の治療に用いられます。マーカーバンドとはその名の通り、カテーテルが体内のどの位置にあるのかを確認するための製品です。プラチナはX線を通さないので、レントゲン写真を撮るとマーカーバンドが写し出され、カテーテルの位置が正確に分かるのです。ガイドワイヤーはカテーテルを患部まで導くために使用されます。電極は心臓内部に電気的な刺激を与え、診断や治療を行うものです。処置後は、きれいになった血管の状態を維持するため、ステントというプラチナ製の小さな管状のパーツも使用されます。
- 神経調節療法
- 現在急速に広がっている治療法の一つに神経調整があります。神経や脳に直接電気的な刺激を与える神経調節機器は、ペースメーカーの技術の延長にあります。そのため「脳のペースメーカー」とも言われ、(ペースメーカーと同様)プラチナ・イリジウム合金製の電極が使用されています。
- その他
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最近開発の進んでいるものに、プラチナ製のコイルを用いた脳の動脈瘤治療があります。血管の内壁が弱いために、血管が膨らんでしまうという症状に対する処置で、動脈瘤の中をプラチナ製のコイルで埋め、破裂を防ぐのです。
さて、ここまで医療分野でのプラチナの用途を見てきました。高齢化社会への移行に伴い、プラチナを使った医療機器への需要は世界的に高まっていくと予想されています。記事では、特に現在十分な治療が行き届いていないとされる新興国での需要拡大を見込んでいるようでした。
